OS自作
Publish date: Dec 14, 2019Tags: os os%e8%87%aa%e4%bd%9c %e3%82%a2%e3%82%bb%e3%83%b3%e3%83%96%e3%83%aa
かねがねOSの自作をしてみたいなと思っていたので
まずは簡易的なOSの実装にチャレンジしてみました。
OSを自作したいと感じたきっかけというか、経緯を簡単に書きたいと思います。
以前参加したOSCにて、サイボウズさんがブース出展をされていて
そのブースには何冊か本が並べてあったのですが
たまたま手にとった本が川合秀実さんのOS自作入門でした。
「うちの社員が書いた本です。初見でそれを手に取るのですねぇ」
と、話しかけて頂いて
OSについて知りたいというよりは
(表紙デザインの猫が可愛らしいな)
と思って手にとったので
その感想をそのまま正直に伝えつつ、本の中身をしばらく見ているうちに
コンピューターの内部について知るためにも
いつかOSを書いてみたいなぁ
と、ふんわり考えるようになりました。
今回の内容は、書籍を参考にOS自作を始める前段階として
取っ掛かりになるような、もっとハードルの低いものから徐々に機能を追加していきたいなぁという気持ちがあり
ちょうど手頃なチュートリアルを見つけたので、試してみたものを簡単な解説とともに作業ログ的にまとめました。
主に参考にした記事です
OSを書く:初歩から一歩ずつ | POSTD
実行環境を整える
まず、実行環境ですが
Macbookにnasm
とmake
とqemu
をインストールします。
※DockerやVMなどを用いてローカル環境を汚さずに行うことも可能です。
ただ今回の内容程度であれば、特に問題ないと判断しました。
今後、自作OSを続けたい場合はgit管理などで仮想マシンへの移動をスムーズにすると良いかもしれません。
$ brew install nasm
$ brew install make
$ brew install qemu
nasm: アセンブラです。機械が理解できる命令プログラム(アセンブリコード)を機械が理解できる命令(バイナリコード)に置き換えてコンピューターが実行できるようにします。
make: コンパイルを自動化するツールです。
qemu: キューエミューと読みます。自作したOSは、このエミュレーターを介して実行されます。いわゆる仮想マシンです。
コンピューターの起動
コンピューターが起動してからの処理について
わかりやすい概要を見つけたので記載します。
0から作るOS開発
電源ボタンをONするとまずBIOS(BasicInputOutputSystem)が動き出します。BIOSはその名の通り基本的な(Basic)入力(Input)と出力(Output)を制御するハードウェアとソフトウェアのシステム(System)です。(このあたりは別に読み飛ばしても問題ありません)。BIOSが動き出すとPOST(PowerOnSelfTest)と呼ばれている処理を行います。POST処理では接続されたデバイスのチェック・初期設定、メモリーのチェックを行って正常にシステムが起動できるかどうかをチェックします。起動できると判断すると次にブートローダーまたはOSをメモリーにロードします。ブートローダーまたはプログラムがロードされた後にそのプログラムが様々な処理を簡単に行えるように、BIOSは入出力デバイスの操作をプログラムから利用できるインターフェースを用意しています。
0から作るOS開発 vol.0
MBR(マスターブートレコード)の容量には上限があり、それを解決するためにブートローダーが用いられます。今回作成するOSはとてもシンプルなため、ブートローダを使用してさらにコードをロードすることはありません。
アセンブリコードを書いてみる
実際にアセンブリコードを書いてみます。
$ vi boot.asm
; boot.asm
hang:
jmp hang
times 510-($-$$) db 0
; This is a comment
db 0x55
db 0xAA
hang:
コード内の名前つきマーカーです。
jmp hang
: マーカーhangにジャンプします。これで無限ループになります。
times 510-($-$$) db 0
: 残りのバイトを0で埋めるためのnasm構文です。
$
: 現在の行の先頭
$$
: ファイルやセクションの先頭
($-$$)
: ファイルの先頭から現在の位置を引く
2つのdbコマンドが最後に2バイト分で格納するため、MBRの残りの512バイトを埋めるのに512という数を使いません。
;
: コロン以降はコメントアウトになります。
0x55
と0xAA
: BIOSに「はい、これは実行可能なMBRです」というふうに知らせます。
作成したファイルをバイナリファイルに変換して、コンピューターが実行できるようにします。
$ nasm -f bin boot.asm -o boot.bin
-f bin
: nasmがバイナリフォーマットにアセンブルします。
boot.asm
: nasmがアセンブルしようとしているアセンブリファイルです。
boot.bin
: は出力ファイル名です。
エミュレーターで実行してみます。
$ qemu-system-x86_64 boot.bin
アセンブリファイルをコンパイルして実行することができました👏
Makefileをの作成
次に、Makefileを作成してコンパイルを自動化します。
vi Makefile
boot.bin: boot.asm
nasm -f bin boot.asm -o boot.bin
qemu: boot.bin
qemu-system-x86_64 boot.bin
clean:
rm *.bin
Makefileの文法を解説します。
ターゲット名: 依存ファイル名 1 依存ファイル名 2 依存ファイル名 3 コマンド行 1 コマンド行 2 コマンド行 3
ターゲット名は、のちに登場するコマンドのリストに使用する名前です。
ex. make clean
とmake
をタイプすると、rm *.bin
が実行され、すべてのアセンブルされたファイルを削除します。
コロンの後の値は、依存ファイルです。
ターゲット名から始まる行の次の行から実行するコマンドを記述します。
コマンドを記述する場合は、必ず先頭にタブ文字を入れてください。
ターゲット名を指定してmakeを実行する場合は
$ make ターゲット名
とします。
※ターゲットを省略するとMakefileの中で先頭のターゲットが実行されます。
ex. make qemu
とタイプすれば、make
はboot.bin
のコマンド(nasm -f bin boot.asm -o boot.bin
)を実行したあと、qemu-system-x86_64 boot.bin
を実行します。
文字を表示してみる
boot.asm
アセンブリファイルを書き換えて、スクリーンに文字を表示させてみます。
vi boot.asm
; boot.asm
mov ax, 0x07c0
mov ds, ax
mov ah, 0x0
mov al, 0x3
int 0x10
mov si, msg
mov ah, 0x0E
print_character_loop:
lodsb
or al, al
jz hang
int 0x10
jmp print_character_loop
msg:
db 'Hello, World!', 13, 10, 0
hang:
jmp hang
times 510-($-$$) db 0
db 0x55
db 0xAA
ファイルを編集したら実行してみます。
$ make clean
$ make qemu
内容の解説
mov ax, 0x07c0
mov ds, ax
mov
はデータを動かす命令です。
ここでは0x07c0
を汎用レジスタax
(アキュムレータ)へ移動したあとに ax
を ds
(データセグメント)にロードします。
BIOSは毎回 0x07c0:0x0000
の位置にMBRをロードするため、このように設定します。
ds
はレジスタから移動してきたデータのみを受け取る仕様のため、このように段階を踏んでデータの受け渡しを行います。
レジスタ: CPU内の記憶装置です。それぞれに役割があり、例えば今回のケースではセグメントレジスタに値を入れることでセグメントの開始位置が変わります。0x07C0をds
レジスターに格納することで、セグメントの開始位置が0x7C00になります。
セグメント: メモリーをセグメントと呼ばれるある程度の大きさに区切ったものをいいます。全容量の上限は決まっていますが、一つ一つの大きさやメモリー上の場所を自分で変更することが可能です。また、セグメント同士の領域はお互い重複するようにすることもできます。
参照: 0から作るOS開発
ファイルの中身についてざっくりと解説をします。
Hello, Worldが表示された画面がこちらです👏