庭のはなし

Publish date: Nov 16, 2022
Tags: life

思い出したのでここに書いておくね。
現実と現実じゃないことのあいだみたいなお話なので、読み流すような気持ちで読んでください。

ちょうど9月の初めくらいかな。(庭に何かおるなぁ)と、おもったら近所の鳩がいたんよね。
どうして庭に居るんだろうと眺めていたの。

そういえばひと月前あたり、あの子が
「この鳩、怪我してる」
と言って連れ込もうとしていたなぁとおもいだした。

「病気をもってるかもしれないし放っておきなさい」
と諭したのにちっとも聞かないから、仕方なく庭に入れさせたのよね。

鳩への入れ込みようをみて(そんなにお世話して、死んじゃったらどうするんだろう)と少し心配だった。わたしは家の中から、たまに庭を覗いては様子を見ていた。
あの子が安心してお世話できるように、軒先で様子を見るようになった。

庭には犬も飼っていて、あまり人に懐かないのだけれども、あの子にはよく懐いているみたいだった。

あれからひと月経って、ずいぶん元気になったように見えるけれど、どうかな。わたしにはわからないし、あの子につらい思いをさせたくないので、庭に鳩が飛んできても気にせずに見守ることにした。

ここ数ヶ月のことが全部まるまる夢のなかの出来事で
「なんだ、夢だったのか」
と、突然目が覚めないかしらとたまに考える。

庭も、庭で遊ぶあの子も、怪我をした鳩も、わたしにとっては現実味がない。

その庭は猫の額ほどの広さなので、いつも目を行き届かせて手入れをしていた。小鳥や虫が勝手に入ってこないように気を配っていた。

こうやって庭について事細かに書くことで、現実味のない庭がそこに実在するように見えるかしらとおもったけれど、日が暮れただけだった。